2011年5月21日土曜日

著者の情熱と努力がみちみちに詰まった「過剰な本」。

青山ブックセンター本店の向かいにあるワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」をご存じですか? ワイン愛好家なら誰もが知っている学校です。


そのアカデミー・デュ・ヴァン東京校の立花峰夫先生が、メルマガ「アマトゥール・デュ・ヴァン」の中で、『日本ワインガイド 純国産ワイナリーと造り手たち』の書評を書いてくださいました。
とてもうれしかったので、先生の了承を得て、このブログに転載させていただきます。
立花先生、ありがとうございます。
(S)


では、先生の書評です。


このたび、日本ワインに関する気合い&渾身の書物が刊行されました。

日本ワインガイド 純国産ワイナリーと造り手たち
鹿取みゆき著(虹有社/3,675円税込)

著者は、ワイナートほか多くのワイン専門誌や食の専門誌、新聞などで活躍するフード&ワインジャーナリストの鹿取みゆき氏。ワインの香り研究の分野でも目覚ましい仕事をされている氏の、もうひとつのライフワークが日本ワインの紹介・普及活動です。10年近くに及ぶ鹿取氏の精力的な「現場100回」が結晶となったのが、本書『日本ワインガイド』であります。

この本は、著者の情熱と努力がみちみちに詰まった「過剰な本」です。編集人は職人的ワインライターが手堅く、バランス良くまとめたワイン本も嫌いではないのですが、琴線をぐいっと掴まれるのは、こういう書き手の思いが勢い余ってあふれてしまった本です。というわけで、とてもオススメです。

本書は、国産ブドウだけでワインを造る気鋭の造り手を詳細に紹介したガイドブックなのですが、総ページ数530余りのこの大著に掲載されている造り手は、50にも足りません。その分、ひとつひとつのワイナリーについての情報量ははハンパなし。欄外に小さな文字でギュウギュウに詰め込まれているのは、栽培・醸造家の人柄や経歴、モットー、畑やワイナリーでの具体的な作業やプロセスの詳細、どこで売られているか、など実に多岐に渡ります(本文ではもちろん、どんなワイナリーなのか、どんなワインが造られているのか、というオーソドックスな情報がしっかりとまとめられています)。どこにどれだけの自社畑があってどんな品種を植えていて、どこの栽培家からどんなブドウを買っていて、というデータも、見やすいチャートにまとめられています。

今の日本ワインの来し方がわかる、簡にして要を得た概論もついていますし、銘柄毎のリリースカレンダー(最近は、発売即完売といったカルト日本ワインも増えているのです)、日本ワインの品揃えのよい酒販店リスト、「日本ワインの実力を示す100本」という優良銘柄のレヴューページまであります。単行本4冊か5冊分の情報を、むりやり1冊にまとめた感のあるこの「過剰さ」、編集人はシビれてしまいました。

今はまさに、ワイナリー訪問にうってつけの季節(といっているうちに猛暑が今年もやってきそうですが)。この本をカバンにしのばせつつ、各地のワイナリーを訪問して、熱い思いでワインを造っている人に会いにいっていただきたいなと思います。日本ワイン、この数年で大きく、素晴らしく変わりました。「国産ワインなんて・・・」と思っている皆様、だまされたと思って一度書店でこの本を手に取ってみてください。ただごとではない感じがそれだけでも伝わると思います。