本が全国の書店さんに並び、読者に届くために、出版業界の物流システムがあります。ものすごくおおざっぱにいうと、出版社→取次→書店→読者という流れが基本です(もちろん取次を通さない出版社もありますし、読者が直接出版社から本を買うこともできます)。
これまでは弊社も、注文のあった本を取次に直接搬入していましたが、これからは出版専門の物流倉庫さんに業務を委託することを考えています。出版社→倉庫→取次→書店→読者という流れになります。
倉庫を利用する主な理由は2つ。1つ目は本の取扱量が少しずつ増え、それに伴い出庫、返品受け入れの作業が多くなり、本来の編集業務の時間が取りづらくなったこと。2つ目は物流倉庫さんにお願いすることで、出版VANという物流(在庫)管理システムを利用できることです。これまで手作業でやっていた伝票整理や取次への搬入を一括して、倉庫会社さんにお願いし、業務の効率化を図る予定です。
で、8月3日(水)に倉庫の見学に行ってきました。まずは埼玉県春日部市にある返品受入倉庫へ。田んぼが広がるのどかな地域にありました。1万5000坪の敷地…。足を踏み入れると、返本の山、山、山…。この倉庫会社さんと契約する90(たしかそれくらい)の出版社の返本が泣くほど積まれていました。ここでは断裁も行われていて、ぐちゃぐちゃになった本は圧縮され、1トンの紙の塊へと姿を変えていきます。(せつない)
次に行ったのは、出庫用の物流センター。注文があると、ここから取次に本を出庫し、書店、読者へと届ける、起点となる場所です。
どちらもシステマチックで、業務委託をお願いしたいと思える内容でした。
ただ、それとは別に、返本の山を見上げ、電子書籍のことを考えずにはいられませんでした。電子書籍が主流になれば、すべてではないにしても、この山はなくなるのだなと。電子書籍の話を業界の人とすると、「在庫を持たなくてもよい」という経営上の利点もよく聞きます。これまでは「それはそうだけど、現状ではそれ以外の課題のほうが多いよなぁ。最新の情報はキャッチしつつも、もう少し状況が整ってから参入しよう」と考えていました。が、返本の山を見て、「この壮大なムダがこのまま続くはずがない」と強く思いました。
ということで、自分の中で1年半ぶりくらいに高まってきた電子書籍熱を、なんらかの形にしていきたいと思います。(S)